地域での医療・介護・福祉などの包括連携体制の理想郷を求めて

 第二次世界大戦後のベビーブームと言われた「団塊の世代」という人々が、前期高齢者の仲間入りをし、更に2~3年後には戦前に生まれた人々が全て後期高齢者となり、空前の超高齢化社会が到来します。
 医学の進歩は、命を救うと同時に、一方では寿命を延ばすことにも成功したと言えるでしょう。しかし、高齢化と共に大家族制から核家族化へと生活様式も大きく変化し、われわれの生活環境は大きく変貌しています。人が長生きをするということは、その反面、生活習慣病、認知症、寝たきり等多くの慢性疾患を抱えることでもあります。
 高齢化社会においては、高齢者が抱える身体的、精神的、経済的、或は生活面などの問題を包括し、人々が住み慣れた地域で、心豊かに、自分らしく生きる、生活の質(QOL)の向上が課題です。
かつて社会的入院と言われたように、病院は高齢者が抱える全ての疾病から生活に至る部分を担ってきました。しかし、慢性期疾患をもつ高齢者や独居、老老介護も含め、増え続ける高齢者に対して、病院などが全て対応するのは困難な社会状況となり、「病院」から「介護」へ、「施設」から「地域」への方向性が示されています。
 病院、診療所、訪問看護ステーション、自宅、老人ホーム、高齢者住宅、それに行政機関などを含め、そこに関わる医師、看護師、介護福祉士、ケアマネージャー、リハビリ・セラピスト、ヘルパー、民生委員、地域の人々、行政職員など多種多様の人々が連携し、それぞれに協力し合い、地域での包括的な支援体制をどうするか、より効果的・効率的な医療・介護・福祉を中心とするサービス提供体制の構築が求められます。
 私たちはこの社会情勢の変化にどの様に対応すべきか、現在は明確な回答は得られていません。しかし、この地域の高齢者のみなさんが在宅で医療や介護を受けながら、ひとりでも安心して暮らせる支援体制をどうすべきか、その構築に向けて「小県地域在宅医療・介護を考える会」を立ち上げることにしました。当初、何をどの様に問題提起すべきか、理解に苦しみました。暗中模索のなか、情報のみの意見交換でありましたが、会を重ねるうちに在宅で生活している高齢者の方々に、私たちのみならず「地域は何をすべきか」の糸口がかすかに見えてきました。
 会議で種々掲げられた問題を具体化するためには、それぞれの専門職種がチームを作らなければならないという認識に至り、お互いの思いや問題点を集約化させようと頻回に亘り検討を重ね、平成26年3月までに会議は16回を数えました。
 会議のなかで専門職同志が認識していたことは、残念ながら「お互いがお互いの活動状況を充分理解していない」という負の問題でありました。同じ患者さんや施設利用者さんに接しているにも関わらず、職種が異なると「誰が関わっているのか」「何をしているのか」「どんな対応をしているのか」といった基本的なことすら理解していないと知ったのです。このことは、逆にこの会への参加者に新鮮な驚きや発見を与え、ただ与えられた仕事のみに奔走していたことに気付かされました。十数回の会議のなかから得たものは、在宅で生活する方々に対するそれぞれの職種の「連携と共有」という重要な命題でした。「在宅チーム」ができたと言っても良いでしょう。
 このチームを核とし、在宅を中心とした医療・介護・福祉などの連携体制の理想郷をこの地域で目指したいと思います。